有機フッ素化合物PFASと歯科の関係

近年、環境汚染物質として注目されている有機フッ素化合物PFAS(パーフルオロアルキル物質)が大きな問題となっています。お隣の東広島市でも、2024年1月以降に、PFASの検出が相次いでおり環境への影響が懸念されています。そこで、PFASと私たちの口腔の健康を支える歯科治療との関係について、少し考えてみましょう。

PFASとは?

PFASは、炭素とフッ素の結合が非常に強い人工化合物で、耐熱性、耐水性、耐油性などの優れた特性を持つことから、工業製品や生活用品に広く利用されてきました。しかし、その一方で、自然界で分解されにくく、人体に蓄積される可能性があることから、環境汚染や健康への影響が懸念され世界で問題となっています。

PFASと健康への影響

PFASが人体に与える影響については、まだ解明されていない部分も多く、たくさんの研究が進められています。しかし、これまでの研究から、以下の健康への悪影響が指摘されています。

  • 免疫機能の低下: 感染症にかかりやすくなったり、ワクチンの効果が弱まる可能性があります。
  • がんのリスク増加: 特定の種類のがんのリスクが高まる可能性が指摘されています。
  • 生殖能力の低下: 不妊症や早産のリスクが高まる可能性があります。
  • 甲状腺機能の障害: 甲状腺ホルモンの分泌に影響を与える可能性があります。

PFASと歯科の接点

フッ素が含まれているPFASは、歯科とは直接的な関係ないように思われるかもしれませんが、実は、歯磨き粉や歯科用器具の製造過程で、PFASが使用されている可能性があります。しかしながら、実は歯磨き粉や歯科で使うフッ素とPFASは異なる物質なため、安心してお使いください。

  • 歯磨き粉: 一部の歯磨き粉には、PFASの一種であるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が含まれていることが過去に報告されています。PFOAは、歯磨き粉の泡立ちをよくしたり、歯の表面をコーティングする効果があるとされています。しかし、歯磨き粉のフッ素は、無機フッ素化合物というフッ素とナトリウム・カルシウムなどの金属や非金属が結合した化合物であり、これは自然界にも存在するものです。

歯磨き粉に含まれているフッ素濃度

歯磨き粉のフッ素は、普段使う程度の量であれば摂取しても特に問題ありません。年齢によって推奨されるフッ素濃度は異なりますが、0〜5歳:500ppmから1,000ppm、 6歳以上:1,500ppmが認められています。1回当たり、歯ブラシの毛先に少量つける程度であれば特に問題とされていません。

また、歯科医院で行うフッ素濃度も9,000ppm高濃度ですが、周りに医療設備があるため大きな問題となる事はありません。

ただし、一度に大量のフッ素を摂取した場合、下痢や嘔吐、吐き気などの中毒症状を起こす可能性があるので注意が必要です。フッ化物の急性中毒量は、体重1kgあたりフッ化物の量2mgですが、極端な話、歯磨き粉1本を一度に体内に取り込むと急性中毒の症状が現れるとされています。もし、中毒症状が出た場合には、牛乳やグルコン酸カルシウムなどのカルシウム剤を応急的に服用し、早急に病院に受診してください。

まとめ

有機フッ素化合物PFASは、私たちの生活に深く根付いており、歯科治療とも無関係ではありません。PFASが人体に与える影響については、まだ不明な点が多いものの、健康への悪影響が懸念されています。

歯科医院では、患者に対してPFASに関する情報を提供し、安全な歯科治療を提供することが求められます。また、患者自身も、PFASの問題について理解を深め、積極的にコミュニケーションをとることで、安全に歯科治療を受けることが可能となります。

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