矯正治療中に「歯がしみる?」知覚過敏の原因と予防法
矯正治療を受けている患者さんや保護者の方から、「最近、冷たいものがしみるようになった」「歯みがきのときにピリッと痛む」といった相談を受けることがあります。こうした症状の多くは「知覚過敏(ちかくかびん)」によるものです。
矯正治療と知覚過敏にはどのような関係があるのでしょうか?また、痛みを予防するにはどんな工夫が必要なのでしょうか?このコラムでは、矯正中の知覚過敏の原因、対処法、そして予防法について詳しくご紹介します。

知覚過敏とは?
知覚過敏とは、冷たい水や風、歯ブラシの毛先など、日常的な刺激に対して歯が一時的に「キーン」としみるような痛みを感じる状態です。
通常、歯の表面は「エナメル質」と呼ばれる硬い層で覆われており、外部の刺激から歯の内側を守っています。しかし、何らかの原因でこのエナメル質がすり減ったり、歯ぐきが下がって歯の根元(象牙質)が露出したりすると、神経に近い部分が刺激を受けやすくなり、痛みを感じるようになります。
なぜ矯正中に知覚過敏が起こるの?
矯正治療では、歯を骨の中で少しずつ移動させていくため、歯の周囲の骨や歯ぐきにも変化が生じます。その過程で、以下のような理由から知覚過敏が起こることがあります:
- 歯ぐきが下がることによる歯根の露出
歯が動く際に、歯ぐきがわずかに下がることがあります。これによって、本来歯ぐきに覆われていた象牙質が露出し、刺激を感じやすくなります。 - エナメル質の摩耗や破損
矯正装置やワイヤーによる清掃の難しさから、磨き残しが起こりやすくなり、エナメル質が脱灰(カルシウムが溶け出すこと)しやすくなります。 - 一時的な神経の反応
歯が動くことで歯の根の周辺に軽い炎症が起き、神経が一時的に過敏になることがあります。
痛みが出たらどうすればいい?
知覚過敏は一時的なことが多く、矯正治療の進行とともに自然と落ち着く場合もあります。ただし、症状が強い場合や長引く場合は、歯科医院での診察をおすすめします。
以下のような対処法が効果的です:
- 知覚過敏用の歯みがき粉を使う
市販品の「シュミテクト」「チェックアップ ルートケア」など、知覚過敏対策用の歯みがき粉には、刺激を伝えにくくする成分が含まれています。 - やさしいブラッシングを心がける
力を入れすぎると歯ぐきを傷つけ、歯肉退縮を悪化させる可能性があります。小刻みにやさしく磨きましょう。 - 刺激の強い飲食を避ける
冷たいアイスや炭酸飲料、酸味の強い柑橘類などは一時的に控えると症状が和らぎます。 - フッ素塗布
フッ素にはエナメル質を強化し、象牙質の刺激を抑える効果があります。定期的な塗布やフッ素洗口も有効です。
知覚過敏を防ぐためにできること(予防法)
症状が出てからの対処も大切ですが、あらかじめ予防しておくことで、より快適に矯正治療を続けることができます。以下のようなポイントを意識してみましょう:
- 正しい歯みがき習慣を身につける
矯正装置があると、どうしても磨き残しが出やすくなります。歯間ブラシやワンタフトブラシを活用し、装置の周囲もていねいに磨きましょう。 - 研磨剤の少ない歯みがき粉を選ぶ
市販の歯みがき粉には研磨剤が多く含まれているものがあります。過度な研磨はエナメル質を傷つけ、知覚過敏の原因になります。 - 食後すぐのブラッシングを避ける
食後30分以内は、口の中が酸性に傾いており、エナメル質が柔らかくなっています。すぐにゴシゴシ磨くと、かえって歯を傷める原因になることも。うがいで中和し、30分ほど経ってからやさしく磨くと◎。 - 定期的なメンテナンスを受ける
矯正治療中も、定期的なクリーニングや歯ぐきチェックを受けることで、早期の問題発見・予防が可能になります。 - 食生活の見直し
酸性の飲食物を取りすぎるとエナメル質が溶けやすくなります。スポーツドリンクや炭酸飲料、柑橘類を日常的に摂っている方は注意が必要です。
最後に:不安なときは遠慮なく相談を

知覚過敏は「歯が動いている証拠」でもあります。一時的な症状であることも多いですが、我慢せず、気になることがあれば遠慮なく私たちにご相談ください。
矯正治療は、見た目だけでなく、かみ合わせや将来の歯の健康を守るための大切なステップです。途中でつらいことがあっても、適切なケアと予防で乗り越えていけます。一緒に、健康で美しい笑顔を目指して頑張りましょう!
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