金属アレルギーと矯正歯科治療の関係


〜安心して矯正治療を進めるために知っておきたいこと〜

矯正歯科治療で使われる装置には、金属を含むものが多くあります。そのため、金属アレルギーがある方や、疑いがある方にとって「矯正治療は大丈夫なのだろうか?」という不安は非常に大きいものです。
本記事では、矯正歯科治療に使われる金属とアレルギーの関係、対策、そして金属を使わない治療の選択肢まで詳しく説明します。


■ 金属アレルギーとは?

金属アレルギーは、金属が汗や唾液によってイオン化し、体内でアレルギー反応を引き起こすことで発症します。一般的には、ピアスや腕時計のかぶれで知られていますが、口腔内で使用される銀歯や矯正装置が原因になることもあります。

主な症状:

  • 舌や唇のヒリつき
  • 口角炎
  • 口内炎の慢性化
  • 金属味
  • まれに全身症状(湿疹、倦怠感など)

事前に自覚がないまま歯科治療開始後に初めて反応が出るケースもあります。


■ 矯正治療に使われる金属とアレルギーのリスク

● ニッケル

最もアレルギー頻度が高い金属。
従来のワイヤーやブラケットに含まれることが多く、注意が必要です。

● コバルト・クロム

耐久性が高く、補綴物にも幅広く用いられる金属。
人によってはアレルギーが起きることがあります。

● チタン(チタン合金)

アレルギー反応が非常に出にくい金属。
矯正ワイヤーやインプラントで主流に使われています。

ステンレススチール

矯正器具、とくにワイヤーで一般的に使われる金属です。
ステンレスは鉄をベースに、クロム・ニッケルを加えて耐食性を高めています。
そのため、「ステンレス=アレルギーが安全」というわけではなく、ニッケルを含むため、ニッケルアレルギーの人は注意が必要です。

一方で、医療グレードのステンレスは腐食しにくく、アレルギー発症リスクは低めとされていますが、ゼロではありません。

モリブテン

ステンレス合金の強度や耐食性を高めるために添加される金属です。
モリブデン自体でアレルギーを起こすケースは非常に少なく、医学的にもアレルギー源としては稀な金属に分類されます。

しかし、モリブテンを含む合金には他の金属(ニッケル・クロム)が含まれる場合が多いため、「モリブテン=安全」というわけではなく、合金全体の構成を確認することが重要です。


■ 金属アレルギーが心配な場合にできること

① パッチテストの実施

皮膚科で行うパッチテストは、矯正歯科治療で主に使われる
ニッケル・クロム・コバルト・金・パラジウム・ステンレス関連などの反応を事前に調べられます。

② 症状や既往歴を歯科医に伝える

ピアスやアクセサリーがかぶれやすいなどの情報は非常に重要です。
治療方針や素材選びに反映されます。

③ メタルフリー装置の選択

近年は金属不使用の矯正装置が増えているため、金属アレルギーの方でも安全に治療できます。


■ 金属を使わない矯正の選択肢

● セラミックブラケット

白くて目立ちにくく、金属アレルギーが起きにくい素材。

● チタンブラケット

金属アレルギーが心配な方でも使用しやすい安全性の高い金属。

● 完全メタルフリー「マウスピース矯正」

インビザラインなどの透明アライナーはプラスチック製で金属ゼロ。
取り外し可能で衛生的な点も人気です。


■ 金属アレルギーと矯正歯科治療の実際のリスク

矯正治療が原因で強い金属アレルギーを起こすケースは多くはありませんが、ニッケルアレルギーは比較的よく見られます。
ステンレスワイヤーにはニッケルが含まれるため、アレルギーがある人にはチタンワイヤーやメタルフリーが推奨されます。

また、矯正装置は長期間口腔内に滞在するため、一度反応が出ると生活の質に影響を及ぼす可能性があります。治療開始前の準備がとても重要です。


■ 金属アレルギーが疑われる方におすすめの治療手順

  1. 皮膚科でパッチテスト
  2. アレルギー反応のある金属を確認
  3. 矯正歯科で使用素材を相談
  4. セラミックブラケット or マウスピースなどのメタルフリー矯正を選択
  5. 治療中の違和感や口内炎をすぐ歯科医に報告

これにより、ほとんどの方は安全に矯正が可能です。


■ まとめ

矯正歯科治療で使用される金属には、ニッケル・クロム・ステンレス・モリブテンなどさまざまな種類があります。
特にステンレスは一般的な材料ですが、ニッケルを含むことが多いため、金属アレルギーの人は注意が必要です。
一方、モリブテン自体のアレルギーは稀ですが、合金全体を理解することが大切です。

近年はマウスピース矯正やセラミックなど、金属を使わずに治療できる選択肢も増えています。
金属アレルギーがあっても、適切な素材選びと検査を行えば安全に矯正治療を進められます。

不安な点がある場合は、ぜひ矯正歯科専門医と相談して、最適な治療方法を選択してみてください。


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