災害時における矯正治療―もしものために知っておきたいこと
ここ数か月、大規模な地震や大雨、台風、洪水などの自然災害が相次いでいます。
災害はいつ、どこで起こるか分かりません。
次の瞬間自分にも直面するかもしれません。
矯正治療中の患者さんにとっては、
「装置が壊れたらどうすればよいの?」
「避難するときに何を持って行けばよい?」
「しばらく通院できなくても大丈夫?」といった不安もあると思います。
今回は、災害時に矯正治療中の方が気をつけたいことや、日頃から準備しておきたいものについてご紹介します。

まずは安全の確保を最優先に
災害が発生したときは、矯正治療のことよりも、まずご自身とご家族の安全を確保してください。矯正装置の破損や通院日の変更は、多くの場合、数日から数週間程度であれば治療結果に大きな影響を与えないことがほとんどです。
道路や公共交通機関が不安定な状態で、無理をして歯科医院へ向かう必要はありません。予約日に来院できない場合は、安全が確保され、通信環境が落ち着いてから歯科医院へご連絡ください。
避難するときに持って行きたいもの
矯正治療中の方は、一般的な防災用品に加えて、次のものをまとめておくと安心です。
・歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス
・少量の歯磨き粉
・矯正用ワックス
・マウスピースやリテーナーのケース
・使用中のマウスピースと、その一つ前のマウスピース
・顎間ゴムと交換用のゴム
・小さな鏡
・清潔なガーゼやティッシュ
・通院している歯科医院の連絡先
これらを小さなポーチにまとめ、非常用持ち出し袋に入れておくと、急な避難時にも対応しやすくなります。マウスピースやリテーナーをティッシュに包むと、誤って捨ててしまうことがあります。必ず専用ケースに入れる習慣をつけましょう。
ブラケットやワイヤーが外れたとき
地震や転倒、硬い非常食などが原因で、ブラケットが外れたり、ワイヤーが頬や唇に当たったりすることがあります。
ワイヤーの先端が粘膜に当たって痛い場合は、矯正用ワックスで覆ってください。ワックスがないときは、清潔なガーゼやティッシュを小さく丸めて一時的に当てる方法もあります。
ブラケットが外れても、ワイヤーにつながったままで痛みがなければ、無理に取り外す必要はありません。飲み込む危険がありそうな場合は、触り続けず、可能であれば歯科医院へ連絡してください。
ワイヤーを自分で強く曲げたり、工具で切ったりすると、口の中を傷つける可能性があります。緊急時を除き、自己判断での処置は避けましょう。
もし装置を飲み込んでしまっても、多くは消化管を通過しますが、激しい咳、息苦しさ、胸の痛みなどがある場合は、気道に入った可能性があります。その場合は、矯正歯科ではなく救急へ連絡してください。レントゲンを撮ることで飲み込んだ装置の居場所を確認できます。
マウスピース矯正中の場合
避難生活では、次のマウスピースへ交換する日が来ても、歯科医院と連絡が取れないことがあります。
その場合は、基本的に現在使用しているマウスピースをそのまま装着し、歯の位置を維持してください。紛失した場合に備えて、一つ前のマウスピースも保管しておくと安心です。
現在のマウスピースが破損した、強く変形した、装着すると痛みが強いという場合は、無理に使用せず、一つ前のマウスピースに戻して歯科医院へご相談ください。
また、水不足の状況ではマウスピースを十分に洗えないことがあります。少量でも飲用可能な水で汚れを流し、装着前にはできる範囲で歯や口の中を清潔にしましょう。熱湯で洗うと変形するため使用しないでください。
顎間ゴムや取り外し式装置について
顎間ゴムは、かける場所が分からなくなった場合や、装置の一部が外れた場合には、いったん使用を中止してください。間違った場所にかけ続けると、予定とは異なる方向へ歯が動く可能性があります。
拡大床や機能的矯正装置などの取り外し式装置や保定装置も、変形や破損があるときは無理に装着しないでください。問題なく装着できる場合は、可能な範囲でこれまでどおり使用しましょう。
避難生活では口腔ケアも大切です
避難生活では、水不足や生活環境の変化によって歯磨きが難しくなります。さらに、保存食や菓子パンなど、糖質を多く含む食品を少量ずつ何度も食べることが増え、むし歯や歯肉炎のリスクが高くなります。
特にブラケット装置の周囲には食べ物が残りやすいため、歯ブラシが使えるときは少量の水でも丁寧に磨きましょう。歯磨きが難しい場合は、食後に水やお茶で口をすすぐだけでも役立ちます。キシリトール入りのシュガーレスガムも、使用できる環境であれば補助になります。
ただし、うがいだけですべての汚れを取り除けるわけではありません。歯磨きができる状況になったら、装置の周囲や歯と歯の間を丁寧に清掃してください。
通院できない期間が続いても慌てないでください
災害の影響で予約どおりに通院できなくても、すぐに治療が台無しになるわけではありません。装置を無理に触らず、できる範囲で清潔に保ち、マウスピースや保定装置は歯科医院から指示された方法で使用してください。
痛みが強い、出血が止まらない、顔が大きく腫れている、歯が折れた・抜けた、息苦しさがあるなどの場合は、矯正装置の問題だけではない可能性があります。地域の救急医療機関や災害時の歯科救護所へ相談してください。
日頃の小さな備えが安心につながります
災害時は、普段なら簡単に対応できる矯正装置のトラブルでも、大きな不安につながります。矯正用ワックスや予備の顎間ゴム、マウスピースケースなどを防災用品に加え、歯科医院の連絡先をスマートフォン以外にも控えておきましょう。
やまの矯正歯科クリニックでは、災害などにより通院が難しくなった場合も、患者さんの安全を第一に考えて対応いたします。まずは身の安全を確保し、落ち着いてからご連絡ください。
この機会に、ご家庭の防災用品と一緒に「矯正治療中の備え」も確認しておきましょう。
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